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ある学校の体育館

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ある学校の体育館。

ここでワークショップをするのは今日が初めてである。
あと5分で子供たちがやってくる。講師たちは歌を歌ったり、ストレッチをしたりしながら、まだ見ぬ子供たちとの出会いに備えている。
体育館に響いている歌は一昔前のもので、きっとこれからやってくる子供たちは知らないか、もし知っていても美空ひばりと同じ「懐メロ」のカテゴリーなのだろう。

まもなく入り口の方から賑やかな声が聞こえてくる。
先生に促されて挨拶する声は一様に明るい。この時間を楽しみにはしてくれているのだと知り、ホッとする。

チャイムが鳴ると、講師がそれぞれ自己紹介する。
「ホッピーです」と言った途端にドッと笑いが起こる。よし。

諸注意の後、ランダムウォーク。一人になって、歩く。走らないように、隙間を作らないように。
友達にちょっかいを出している子を発見。注意しようとしたら他の講師から先に注意が飛ぶ。

続いて2人一組になってフローズンピクチャー。メイン講師からデモに指名され、扇風機をやる。こういう事は考え込まずにやるのがポイントだが、いつもやり終わった後に「あそこをこうすれば良かった」と後悔する。でもこの後悔が次の表現活動の原動力になるんだよなと大それたことを考えていると、生徒のフローズンピクチャーが始まる。急いで見て回る。
このグループはまだ形になっていないけど、もう少し待っていると面白くなりそう。でもここで立ち止まっていると全員にコメントが出来ない。後ろ髪引かれる思いで他のグループに足を進める。結構面白い作品が多い。

4人組、8人組になると、だんだんグループやクラスの差が見えてくる。男女に分かれてしまうグループ、喧嘩が勃発するグループ、誰かが始めるまで誰も動こうとしないグループetc……。おそらく普段の学校生活で繰り返されてきた光景なのだろう。これからの5回のワークショップの中でどう変わっていけるか。少なくとも変わるきっかけを作れたらと思う。

休憩後はフローズンピクチャーの最後に組んだ8人グループで「遊びたい公園」を身体創作する。滑り台、ブランコ、シーソーなど次々と出来上がっていく。傍らを見ると呆然と立っている子が3人いる。

「この公園にどんなものがあったら楽しい?」
「遊びたくない。とりあえず寝たい」
「じゃあ寝るとこあった方がいいね。どんなとこで寝たい?」

僕の頭には真っ先にダンボールハウスが浮かび、提案したい気持ちでいっぱいだったが、さすがにシュールすぎるし、押し付けは良くないと思いとどまる。

「ベンチかな」
「いいじゃん。ベンチ作ろう」

男子2人が土台となり、女子が遠慮がちな手すりになる。
遊びたい人から休みたい人まで集う素敵な公園が出来た。

公園が出来ると鑑賞タイム。他のグループが創った公園を見たり、他のグループに自分達の公園を見てもらったり。他のグループの公園に、自分達にないアイデアを発見して「すげえ!」「こんなのあり!?」という声が上がる。それを聞いて得意になって公園はさらにカッコ良くなる。見る人と見られる人が一体となった瞬間だ。
「見る人と見られる人が一体となって演劇は出来ている」とは言ったものだが、実はプロの舞台では滅多にない光景だ。
演劇をやっていて良かったとつくづく思う。

鑑賞タイムの後はグループに戻って振り返り。どんなところが楽しかったか、どんなことが難しかったか。一緒に苦労した仲間だからこそ、自分の言葉で語り合える。

最後はクラスごとに並んで、チャイムと共に終わりの挨拶。
興奮冷めやらぬ様子で体育館を後にする。「ホッピーじゃあねー」と言われて、手を振る。次来るのは夏休み後だ。待ち遠しい。

以上昨年度を振り返りながら書いてみました。
今年度は劇作家という職域を生かしたワークショップへの関わり方を考えていきたいと思っています。
ワークショップも自分のアート活動の一部なのだという自負を持って臨みたいです。

 相馬杜宇(あいばもりたか) ワークショップネーム:ホッピー

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