始まりは上着を着たときだ。
かたほうだけ長く垂れ下がるものがある。
用途としてはウェスト下を細く窄めるのに使う紐だ。形骸化したものなのでなくてもいいような気がするのだが、紐を通すので付いているところに紐がないのは多少ではあるが間抜けだ。
そんなことに朝の駅で気が付いた。
仕方がないので潜り込んでしまった紐と格闘すること10分弱。
左の方から、なにやらベージュ色の細いものが。
つまようじだった。
どうぞ。どうも。
なんてやりとりの後、3分。
楊枝のおかげで、紐は無事にもとに戻って、左右均等に垂れ下がっている。
これって返したものか多少なりと悩んだけど、やっぱり返して、お礼を言う。
ありがとう。いえ。
簡単なやりとり。
ということがさっきあった。
楊枝すげー。
ではなく、浮き世もまだ捨てたものではないと思ったのでした。